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2025.06.30

Googleやメルカリが急成長を遂げた目標管理手法「OKR」とは?従来のMBOからの脱却で組織を変革する

「社員一人ひとりが会社の方向性を理解し、主体的に動いてくれない…」 「目標管理制度が形骸化し、ただのノルマ管理になっている…」

このような組織運営の課題を抱える経営者の方は少なくないでしょう。実際、多くの日本企業で導入されてきた従来のMBO(目標による管理)は、人事評価に偏重した結果、本来の目的である「組織の成長促進」から離れてしまっているケースが多く見られます。

そんな中、GoogleやIntel、メルカリといった急成長企業が導入し、驚異的な成果を上げているのが「OKR(Objectives and Key Results)」という目標管理手法です。

なぜ今、OKRが注目されるのか?

OKRが注目される理由は明確です。従来の目標管理制度では実現できなかった「組織全体の連携」と「挑戦する文化」を同時に創り出せるからです。

多くの企業では、各部署が個別に目標を設定し、それぞれが独立して業務を進めています。しかし、これでは部門間の連携が取れず、会社全体としての力を発揮できません。OKRは、このような組織の縦割り構造を打破し、全社一丸となって同じゴールを目指す仕組みを提供します。

OKRの本質:「目標」と「結果」の明確な分離

OKRは、以下の2つの要素で構成されます:

O(Objectives:目標)

「何を成し遂げたいのか」を表す、挑戦的で鮮明な定性目標

  • 例:「業界No.1の顧客満足度を実現する」
  • 例:「市場のゲームチェンジャーとなる革新的サービスを提供する」

KR(Key Results:主要な結果)

目標の達成度を測定する、具体的な定量指標(通常3〜5個)

  • 例:NPS(顧客推奨度)を20ポイント向上させる
  • 例:新規顧客獲得数を月間100社から300社に増加させる
  • 例:製品の市場シェアを15%から25%に拡大する

MBOとの決定的な違い:評価制度からの分離

多くの経営者が誤解しがちなのが、「OKRも結局は評価制度でしょう?」という点です。これは大きな間違いです。

比較項目 OKR 従来のMBO
主目的 組織の成長促進・連携強化 人事評価・報酬決定
目標設定 挑戦的(60-70%達成で成功) 確実に達成可能(100%達成前提)
透明性 全社公開 個人と上司間のみ
更新頻度 四半期ごと 年1回または半年1回
評価との関係 直接連動させない 直接的に評価・報酬に影響

OKRを人事評価に直結させてしまうと、社員は評価を下げないために安全な目標しか設定しなくなります。これでは、OKRの最大の価値である「挑戦する文化の醸成」が失われてしまいます。

経営者視点でのOKR導入メリット

1. 戦略の浸透と実行力の向上

経営戦略を全社OKRとして設定し、各部署・個人のOKRに展開することで、トップの意思が現場の行動に確実に反映されるようになります。

2. 部門間連携の自然発生

全社のOKRが公開されることで、他部署の目標や課題が見える化され、自然と部門を超えた協力関係が生まれます

3. 変化への対応力強化

四半期ごとの見直しにより、市場環境の変化に応じて迅速に軌道修正を行える組織体制が構築されます。

4. 人材の主体性向上

挑戦的な目標設定により、社員の当事者意識と成長意欲が大幅に向上します

導入で失敗しないための経営者の心得

1. 経営陣自らがコミットする

  経営者自身がOKRを設定し、その重要性を継続的に発信することが不可欠です。トップがコミットしていない制度は、必ず形骸化します。

2. スモールスタートで確実に

いきなり全社導入ではなく、まずは1つの部署やチームから始めて、ノウハウを蓄積してから全社展開することをお勧めします。

3. 専任の推進体制を構築

「OKRマスター」のような専任の推進担当者を配置し、導入・運用をサポートする体制を整えましょう。

成功企業の実例から学ぶ

Googleの事例

創業初期からOKRを導入し、CEOからインターンまで全社員のOKRを社内で公開。この徹底した透明性により、急速な事業拡大を支える組織文化を構築。

メルカリの事例

創業期からOKRを活用し、会社のミッション「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」から逆算した目標設計により、スピーディーな意思決定と事業成長を実現。

今すぐ始められる第一歩

OKRの導入を検討している経営者の方は、以下のステップから始めることをお勧めします:

  1. 経営陣でOKRの理解を深める:まず経営チーム自身がOKRを学習
  2. 会社の方向性を明確化:ビジョン・ミッションの再確認
  3. 全社OKRの設定:次四半期の会社全体の目標を設定
  4. パイロット部署の選定:最初に導入する部署を決定
  5. 定期的な振り返りの仕組み作り:週次・月次の進捗確認体制を構築

まとめ:変革の時代に求められる目標管理

激しい変化の時代において、従来の年次目標管理では対応しきれないのが現実です。OKRは、組織の機敏性と挑戦する文化を同時に実現する、現代に最適化された目標管理手法と言えるでしょう。

重要なのは、OKRを単なる「新しい制度」として導入するのではなく、組織文化を変革するためのツールとして捉えることです。正しく運用すれば、社員のエンゲージメント向上、部門間連携の強化、そして持続的な成長を実現する強力なエンジンとなります。

まずは小さく始めて、自社に合った形でOKRを進化させていく。それが、OKR導入成功への最も確実な道筋です。