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2025.06.27

社長、その賞与の決め方で大丈夫ですか?従業員のやる気を最大化する賞与制度の作り方

「今年も何となく去年と同じくらいのボーナスを出そうかな…」

そんな風に、感覚だけで賞与を決めていませんか?

創業当初は数名の従業員だったから、社長の判断だけで「今年は頑張ったから多めに」「今年は厳しいから少なめに」でも通用したかもしれません。しかし、従業員が増えてくると、そんな「どんぶり勘定」では必ず問題が起きます。

「なんで私の方が売上が良いのに、あの人と同じ金額なの?」 「ボーナスの基準が全然わからない」 「社長の好き嫌いで決まってるんじゃないの?」

こんな不満の声が聞こえてきたら、もう待ったなしです。

なぜ今、賞与制度の見直しが必要なのか

中小企業の経営者として、私たちが最も大切にすべきは「従業員のモチベーション」です。優秀な人材に長く働いてもらい、会社の成長を支えてもらうためには、公平で透明性の高い賞与制度が不可欠です。

実際、従業員の離職理由の上位に「評価制度への不満」が常にランクインしています。逆に言えば、しっかりとした賞与制度を構築することで、従業員の定着率向上と生産性アップの両方を実現できるのです。

他社はどのくらい払っているのか?現実的な相場を知る

まず気になるのが「うちの賞与額は妥当なのか?」という点でしょう。

厚生労働省のデータによると、中小企業のボーナス平均額は以下の通りです。

  • 従業員5~29人規模:約27万円
  • 従業員30~99人規模:約39万円
  • 従業員100~499人規模:約51万円

「意外と少ないな」と感じた社長も多いのではないでしょうか。これはあくまで平均値であり、業界や業績によって大きく差があります。

重要なのは、他社との比較ではなく、自社の業績と従業員の貢献度に見合った金額を設定することです。

社長が選ぶべき3つの賞与決定方式

賞与の原資(総額)を決める方法は、大きく3つあります。

1. 業績連動方式:会社の成長を従業員と共有する

「営業利益の15%を賞与原資とする」といったルールを設定する方法です。

メリット:

  • 従業員が会社の業績を意識するようになる
  • 業績悪化時の負担を抑えられる
  • 「会社が儲かれば、みんなも潤う」という一体感が生まれる

デメリット:

  • 業績が悪いと従業員のモチベーションが下がる
  • 計算が複雑になる場合がある

2. 給与連動方式:安定感を重視する

「基本給の○ヶ月分」として支給する方法です。

メリット:

  • 計算がシンプルで分かりやすい
  • 従業員が支給額を予測できるため安心感がある

デメリット:

  • 業績に関係なく一定額を支払う必要がある
  • 個人の成果が反映されにくい

3. 決算賞与:業績好調時のご褒美として

年度末の利益確定後に、その一部を特別に還元する方法です。

メリット:

  • 従業員の満足度が大幅にアップする
  • 節税効果も期待できる
  • 支給義務がないため、柔軟に対応できる

デメリット:

  • 支給が不安定で、期待を裏切る可能性もある

個人の賞与額をどう決めるか?公平性を保つ3つの評価軸

会社全体の原資が決まったら、次は個人への配分です。ここで重要なのが「なぜその金額なのか」を明確に説明できる基準を作ることです。

成果評価:頑張った人が報われる仕組み

売上目標の達成度、新規顧客の獲得数など、具体的な数値で測れる成果を評価します。最も従業員のやる気を引き出しやすい方法です。

能力評価:長期的な成長を促す

専門知識、リーダーシップ、企画力など、業務遂行に必要なスキルを評価します。数値化は難しいですが、従業員の成長意欲を高める効果があります。

情意評価:チームワークを大切にする

勤務態度、協調性、責任感など、組織の雰囲気を良くする要素を評価します。売上には直結しにくいものの、職場環境の向上には欠かせません。

実際の手取り額を知る:賞与計算の落とし穴

「40万円支給する」と決めても、実際に従業員が受け取る金額は約32万円程度になります。社会保険料と所得税で約8万円も引かれるからです。

この差を理解していないと、「思ったより少ない」と従業員をがっかりさせてしまいます。賞与を決める際は、必ず手取り額も計算して伝えるようにしましょう。

就業規則への記載は必須!法的な注意点

賞与制度を設ける場合、就業規則への記載は法律で義務付けられています。一度記載すると、その内容に従って支給する義務が生じるため、慎重に検討する必要があります。

特に重要なのは「業績悪化の場合は支給しないことがある」といった条項を設けておくことです。これにより、経営状況に応じた柔軟な対応が可能になります。

よくある悩みにお答えします

Q: 新入社員にも同額支給すべき?

A: 査定期間を満たしていない場合は、寸志として一定額を支給したり、在籍期間に応じて日割り計算したりする方法があります。大切なのは、本人にその理由を分かりやすく説明することです。

Q: パートやアルバイトにも賞与は必要?

A: 正社員と同じ職務内容・責任であれば、同等の賞与が求められるケースが増えています。まずは職務内容を整理し、貢献度に応じた対応を検討してみましょう。

Q: 退職予定者にも払う必要がある?

A: 就業規則の規定によっては支払わなければならないこともあります。トラブルを避けるためにも、事前に就業規則で「支給日在籍者のみ」といった条件を定めておくと安心です。

最後に:賞与制度は「投資」と考える

賞与は単なる「コスト」ではありません。従業員のモチベーション向上、優秀な人材の確保・定着、そして会社の成長につながる「投資」です。

短期的には負担に感じるかもしれませんが、長期的に見れば必ず会社の競争力強化につながります。

今こそ、感覚に頼った賞与決定から卒業し、従業員が納得できる公平な制度を構築しませんか?

あなたの会社の成長と従業員の幸せのために、賞与制度の見直しを検討してみてください。きっと、これまで以上に一致団結した強いチームが生まれるはずです。

賞与制度の構築でお悩みの場合は、ぜひ当事務所にご相談ください。 労務管理の専門家として、貴社の状況に最適な賞与制度の設計から就業規則の整備まで、トータルでサポートいたします。