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2025.09.28

岡山県の経営者の皆様へ:2025年12月1日、最低賃金は1,047円へ。今、取り組むべき経営課題とは

さて、2025年度の最低賃金について、岡山県では12月1日から時間額1,047円に改定される見通しとなりました。これは、現在の982円から65円という、過去最大級の引き上げ幅です。全国的にも大幅な引き上げ傾向にあり、岡山県も例外ではありません。

今回のコラムでは、この歴史的な最低賃金の改定が岡山県内の経営に与える影響を分析し、経営者の皆様が今から準備すべき具体的な対策について解説します。

2025年度最低賃金改定のポイント:なぜ過去最大の上げ幅になったのか?

今回の改定で特筆すべきは、その上げ幅の大きさと、岡山県における施行日が12月1日と、例年の10月1日から2ヶ月後ろ倒しになった点です。

1. 過去最大の引き上げ額「65円」

背景には、止まらない物価高騰と、政府が推進する「構造的な賃上げ」の実現に向けた強い方針があります。春季労使交渉(春闘)での高い賃上げ率が、最低賃金の議論にも大きな影響を与えました。労働者の生活を守るという観点から、全国的に大幅な引き上げが不可避となったのです。

2. 岡山県の施行日は「12月1日」

通常、最低賃金の改定は10月1日ですが、今回は年末商戦を控える中小企業への影響を考慮し、準備期間を設ける形で12月1日からの施行となりました。しかし、これはあくまで一時的な配慮であり、人件費増加という本質的な課題への対応が免除されるわけではありません。

最低賃金1,047円時代が経営に与える3つのインパクト

今回の改定は、単なる「時給65円アップ」という数字以上の影響を企業経営に与えます。

1. 直接的な人件費の増加

パート・アルバイト従業員を多く雇用されている企業、特に飲食業、小売業、介護サービス業などでは、人件費の増加が直接的に収益を圧迫します。扶養の範囲内で働く従業員の「年収の壁」問題とも絡み合い、シフト調整や人員配置の見直しが急務となります。

2. 既存社員の賃金体系への影響

最低賃金が上昇することで、新人のパート従業員と勤続年数の長い正社員の給与が逆転する、あるいは差が縮まるという現象が起こりえます。これは、従業員のモチベーション低下に直結する深刻な問題です。最低賃金の引き上げに伴い、既存の賃金テーブルや評価制度全体の見直しが不可欠となります。

3. 採用競争力の変化

最低賃金の上昇は、労働市場における採用競争を一層激化させます。近隣の広島県なども含め、地域全体の賃金水準が底上げされる中で、「最低賃金プラスアルファ」の魅力を提示できなければ、優秀な人材の確保はますます困難になるでしょう。

経営者が今すぐ着手すべき3つの対策

この大きな変化を乗り越え、企業成長の機会とするために、以下の3つの対策を提案します。

1. 業務プロセスの見直しと生産性向上

人件費の上昇分を吸収し、利益を確保するためには、生産性の向上が不可欠です。ITツールの導入による業務の自動化・効率化(例:勤怠管理システムの導入、会計ソフトのクラウド化)、作業工程の見直し、多能工化の推進など、従業員一人ひとりの時間当たり付加価値を高める取り組みを具体的に進めましょう。

2. 助成金の活用による投資負担の軽減

国や県は、賃上げに取り組む中小企業を支援するための様々な助成金を用意しています。代表的なものが  「業務改善助成金」  です。これは、生産性向上のための設備投資(例:POSレジ、自動釣銭機、各種ソフトウェアなど)にかかった費用の一部を、事業場内最低賃金の引き上げ額に応じて助成する制度です。専門家である社会保険労務士にご相談いただければ、貴社が活用できる最適な助成金の提案から申請サポートまで行います。

3. 価格転嫁に向けた交渉と付加価値の向上

人件費、原材料費の高騰分を自社だけで吸収するには限界があります。勇気を持って、取引先への価格転嫁交渉を行いましょう。その際、単なる値上げ要求ではなく、自社の製品やサービスの品質向上、納期短縮への努力など、付加価値の向上を具体的に示すことが交渉を円滑に進める鍵となります。

まとめ:変化をチャンスに変えるために

今回の最低賃金の大幅な引き上げは、多くの経営者の皆様にとって厳しい経営判断を迫るものであることは間違いありません。しかし、これを「コスト増」というピンチとしてだけ捉えるのではなく、従業員の待遇改善を通じてモチベーションを高め、生産性向上と企業成長を実現する絶好の「チャンス」と捉えることも可能です。

この過渡期を乗り越えるためには、早期の情報収集と計画的な対策が不可欠です。賃金制度の見直し、就業規則の変更、助成金の活用など、人事労務に関するお悩みは、ぜひ我々松木労務管理事務所にご相談ください。貴社の状況に合わせた最適な解決策を共に考え、持続的な企業発展を全力でサポートいたします。