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2025.09.08

2025年年収の壁廃止はいつ?社会保険と税金への影響を解説

「2025年に年収の壁がなくなるって本当?」「扶養から外れたら損しない?」

パートで働く多くの方が、そんな疑問や不安を抱えているのではないでしょうか。

2025年に向けて、政府は働き方に関わる制度の見直しを進めています。この変更は、特に配偶者の扶養に入りながら働くパート主婦の方にとって、今後の働き方や家計に大きな影響を与える可能性があります。

この記事では、2025年の年収の壁に関する最新情報と、税金・社会保険にどのような影響があるのかを、専門用語を避けながら分かりやすく解説します。ご自身の状況と照らし合わせながら、最適な働き方を見つけるための参考にしてください。

2025年に年収の壁はなくなる?最新情報

「年収の壁が廃止される」という話を耳にして、混乱している方も多いかもしれません。まずは、制度変更の最新情報と全体像を正確に理解しましょう。

結論:年収の壁の「廃止」ではなく「見直し」

結論から言うと、2025年に年収の壁が完全に「廃止」されるわけではありません。 現在政府で進められているのは、主に所得税と社会保険に関する「年収の壁」の制度見直しです。

具体的には、2025年12月1日から所得税の基礎控除と給与所得控除が引き上げられ、給与収入のみの場合の所得税の非課税限度額が従来の103万円から最大160万円に拡大されます。また、社会保険についても、より多くの方が会社の社会保険(健康保険・厚生年金)に加入できるように、加入条件を緩和する法改正が既に成立しています。

制度変更はいつから?2025年に確定した改正と今後のスケジュール

2025年12月1日から、所得税に関する改正が施行されます。

基礎控除が48万円から58万円に、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円にそれぞれ引き上げられ、給与収入のみの場合、年収160万円まで所得税が非課税となります。また、配偶者控除の収入上限も103万円から123万円に引き上げられます。

社会保険の適用拡大については、2025年6月13日に年金制度改正法が成立し、以下の変更が確定しています:

  • 遅くとも2028年5月までに月額8.8万円(年収約106万円)の賃金要件が撤廃される
  • 2027年10月から2035年10月にかけて段階的に従業員数の要件(現在51人以上)が撤廃される

見直しの対象はパート・アルバイトで働く人

今回の制度見直しの主な対象は、企業に雇用されて働くパート・アルバイトの方々です。

夫などの扶養に入りながら、年収を一定額に抑えて働いている方が、社会保険の加入対象となる可能性が高まります。

一方で、個人事業主やフリーランスの方は、国民健康保険と国民年金に加入するため、今回の会社の社会保険の適用拡大の直接的な対象ではありません。

図解!4つの年収の壁と税金・社会保険の違い

「年収の壁」と一言で言っても、実は複数の種類があり、それぞれ「税金」と「社会保険」のどちらに関わるかが異なります。この違いを理解することが、制度変更を正しく把握する第一歩です。

壁の名称従来変更後の年収の目安関連制度本人への影響配偶者への影響
103万円の壁103万円 160万円 ✅撤廃 所得税 給与収入のみの場合、年収160万円までは所得税が非課税。160万円超で課税開始。
106万円の壁 月収8.8万円(年収約106万円) 撤廃予定 ✅ 社会保険(一定企業) 週20時間以上などの条件を満たすと社会保険加入義務。ただし賃金要件は2028年までに廃止。 扶養から外れる
130万円の壁 約130万円 約130万円(変更なし)⚠️ 社会保険 勤務先規模に関わらず、扶養から外れて自ら国保・国年に加入、または勤務先社保に加入。社会保険料負担が十数万円発生。 扶養から外れる
150万円の壁 150万円 160万円 ✅改正 所得税(配偶者特別控除) 配偶者特別控除が満額38万円適用されるのは年収160万円まで。超えると段階的に縮小し、201万円超でゼロ。

※2025年12月の改正により変更

103万円の壁:所得税がかかる基準(2025年12月1日改正)

「103万円の壁」は2025年12月1日の税制改正により実質的に撤廃され、給与収入のみの場合「160万円の壁」となります。

給与収入のみで年収が160万円を超えると、超えた分の金額に対して所得税が課税されます。また、多くの自治体では年収110万円前後で住民税も発生します(住民税の基礎控除43万円+給与所得控除65万円=108万円、自治体により多少異なります)。

また、配偶者控除の収入上限も123万円に引き上げられます。あなたの年収が123万円を超えると、配偶者が受けられる「配偶者控除」の対象から外れます。

106万円の壁:社会保険への加入義務(特定企業)

「106万円の壁」とは、一定の条件を満たす企業で働く場合に、社会保険への加入義務が発生する年収の目安です。

以下の条件をすべて満たすと、年収106万円(月収8.8万円)以上で会社の健康保険・厚生年金に加入する必要があります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 月額賃金が8.8万円以上(遅くとも2028年5月までに撤廃)
  • 雇用期間が2ヶ月を超える見込みがある
  • 学生ではない
  • 勤務先の従業員数が51人以上(2027年10月から段階的に撤廃)

この壁を超えると、給与から社会保険料が天引きされますが、将来受け取る年金が増えるなどのメリットもあります。

130万円の壁:扶養を外れ社会保険に加入する基準

「130万円の壁」とは、勤務先の規模にかかわらず、すべての人が配偶者の社会保険の扶養から外れる年収の基準です。

年収が130万円以上になると、106万円の壁の条件に当てはまらない場合でも、自分で国民健康保険と国民年金に加入するか、勤務先の社会保険に加入しなければなりません。

この壁を超えると、社会保険料の負担が年間で十数万円発生するため、手取り額が大きく減少する「働き損」が最も発生しやすいゾーンと言われています。

150万円の壁:配偶者特別控除の満額適用(確定改正)

2025年12月の改正により、配偶者特別控除が満額(38万円)適用される上限年収は150万円から160万円に引き上げられます。

あなたの年収が123万円を超えても、160万円までであれば、配偶者は「配偶者特別控除」として満額の38万円の控除を受けられます。年収が160万円を超えると控除額が段階的に減少し、201万円を超えるとゼロになります。

2025年制度見直しの具体的な変更点

では、2025年に向けて具体的に何が変わるのでしょうか。確定した変更点を解説します。

所得税の非課税限度額が160万円に拡大(2025年12月1日施行)

2025年12月1日から、給与収入のみの場合の所得税の非課税限度額が103万円から160万円に拡大されます。

これは、基礎控除が最大95万円(給与収入200万円以下の場合)、給与所得控除が65万円に引き上げられることによるものです。給与収入のみで年収160万円までは所得税が課税されなくなり、パートで働く方の税負担が大幅に軽減されます。また、配偶者控除の収入上限も123万円に引き上げられ、より柔軟な働き方が可能になります。

特定親族特別控除の新設(2025年12月1日施行)

19歳以上23歳未満の子どもを扶養する世帯を支援するため、「特定親族特別控除」が新設されます。

従来の特定扶養控除(年収123万円以下で63万円控除)に加えて、子どもの年収が123万円を超えても150万円までは特定扶養控除と同額の63万円の控除が受けられ、150万円を超えても188万円まで段階的に控除が受けられるようになります。これにより、大学生のアルバイト収入が増えても親の税負担が急激に増えることを防げます。

社会保険の適用範囲が拡大される(法改正成立済)

社会保険(健康保険・厚生年金)の適用範囲がさらに拡大される法改正が既に成立しています。

2025年6月13日に成立した年金制度改正法により:

  • 賃金要件(月額8.8万円)の撤廃:遅くとも2028年5月まで
  • 企業規模要件(従業員数51人以上)の段階的撤廃:2027年10月~2035年10月

これが実現すると、これまで対象外だった中小企業で働くパートタイマーも、週20時間以上働けば社会保険に加入することになります。

130万円の壁が形骸化していく

社会保険の適用範囲がすべての企業に拡大されると、「130万円の壁」は形骸化していきます。

段階的な実施により、まず2028年5月までに賃金要件が撤廃され、その後2027年10月から企業規模要件が段階的に撤廃されます。完全実施後は、多くの企業で働く方が週20時間以上の勤務で社会保険への加入対象となります。これにより、働き損の問題が起きやすい106万円~130万円の収入帯で働く人が減ることが想定されています。

年収別!手取り額への影響シミュレーション

制度が変わると、手取り額はどうなるのでしょうか。3つの年収パターンで見ていきましょう。

※社会保険料は岡山県、40歳の場合で計算した概算値です。実際の金額は、お住まいの地域や年齢、加入する健康保険組合によって異なります。

年収123万円以下で働き続ける場合(拡大された扶養範囲)

  • 社会保険料負担: 0円
  • 所得税・住民税: ほぼ0円(ただし住民税均等割がかかる可能性あり)
  • 手取り額: 約123万円

2025年12月の改正により、年収123万円まで配偶者控除を維持しながら働くことができるようになります。 従来の103万円から20万円の収入増が可能になり、家計への貢献度が高まります。

年収130万円前後で社会保険に加入した場合

  • 社会保険料負担: 約18万円(健康保険料 約6.6万円 + 厚生年金保険料 約11.9万円)※岡山県の場合
  • 所得税・住民税: 約3万円
  • 手取り額: 約109万円

年収130万円を稼いでも、社会保険料などが引かれるため、手取り額は年収123万円の場合より減ってしまう「働き損」の状態になる可能性があります。

壁を越え年収150万円以上稼ぐ場合

  • 社会保険料負担: 約22万円(年収150万円の場合)
  • 所得税・住民税: 約6万円
  • 手取り額: 約122万円

社会保険料の負担はありますが、それを上回る収入を得ることで、手取り額は着実に増えていきます。 一般的に、年収160万円を超えると、働き損の状態は解消されると言われています。

損しない働き方の選択肢とメリット・デメリット

制度変更を踏まえ、今後どのような働き方を目指すべきでしょうか。主な選択肢とそれぞれのメリット・デメリットを整理しました。

扶養内で働く:労働時間を調整する(拡大された範囲で)

2025年12月の改正により拡大される範囲(年収123万円まで)で労働時間を調整する働き方です。

メリット

  • 社会保険料の負担がなく、働いた分がほぼそのまま手取りになる。
  • 扶養に関する手続きが不要で、家計管理がしやすい。
  • 従来より20万円多く稼げるようになる。

デメリット

  • 収入の上限が決まってしまう。
  • 将来受け取る厚生年金が増えない。
  • 病気やケガで休んだ際の傷病手当金など、社会保険の保障が受けられない。

扶養を外れる:手取りを増やし将来の年金も増やす

壁を気にせず、積極的に収入を増やしていく働き方です。

メリット

  • 収入の上限を気にせず、キャリアアップやスキルアップを目指せる。
  • 厚生年金に加入することで、将来受け取る年金額が国民年金のみの場合より増える。
  • 健康保険から傷病手当金や出産手当金などの給付を受けられる。

デメリット

  • 社会保険料の負担により、一時的に手取りが減る期間がある。
  • 扶養から外れるための手続きが必要になる。

「年収の壁・支援強化パッケージ」の活用

政府は、壁を越えて働く人を支援するため「年収の壁・支援強化パッケージ」を用意しています。この制度をうまく活用するのも一つの手です。

106万円の壁への対応(キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」)

従業員の社会保険料負担を軽減する手当を支給するなど、収入アップに取り組む企業に対して国が助成金を支給する制度です。労働者1人あたり最大50万円が助成されており、この制度を導入している企業では、壁を越えても手取りが減りにくくなります。

130万円の壁への対応(キャリアアップ助成金「短時間労働者労働時間延長支援コース」)

2025年7月から新設される制度で、有期契約労働者や短時間労働者が社会保険の適用を受ける際、労働時間の延長と賃金増加の組合せで労働者の収入を増加させる取組みを行った事業主に対し、2年間で労働者1人当たり最大75万円を支援する制度です。この制度を導入している企業では、130万円の壁を越えても手取りが減りにくくなります。

130万円の壁への対応(事業主の証明による扶養認定)

人手不足などで一時的に収入が130万円を超えてしまった場合でも、事業主が「一時的な収入増である」と証明すれば、連続2回まで扶養に留まることが可能です。

これらの支援策については、勤務先の担当者に確認してみましょう。

(参考:厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ」)

年収の壁に関するよくある質問

最後に、年収の壁に関してよく寄せられる質問にお答えします。

Q. 夫の会社の家族手当はどうなりますか?

A. 会社の規定を確認する必要があります。

家族手当や配偶者手当は、法律で定められた制度ではなく、会社が独自に設けている福利厚生です。支給条件として「社会保険の扶養に入っていること」を挙げている企業が多いため、あなたが扶養から外れると、手当が支給されなくなる可能性があります。

社会保険料の負担だけでなく、家族手当の減額分も考慮して、家計全体で働き方をシミュレーションすることが重要です。

Q. 扶養を外れる場合、どんな手続きが必要ですか?

A. 主に健康保険と年金の手続きが必要です。

扶養から外れることが決まったら、まず配偶者の勤務先にその旨を伝え、「健康保険被扶養者(異動)届」を提出してもらいます。

その後、ご自身の勤務先で社会保険に加入するか、加入できない場合はお住まいの市区町村役場で国民健康保険と国民年金の加入手続きを行います。必要な書類などは勤務先や役所の担当者に確認してください。

Q. 個人事業主やフリーランスも対象ですか?

A. 今回の社会保険の制度変更の直接の対象ではありません。

2025年に見直されているのは、会社員などが加入する「被用者保険」の適用範囲です。個人事業主やフリーランスの方は、ご自身で国民健康保険と国民年金に加入するため、今回の変更による直接的な影響はありません。

ただし、配偶者が会社員でその扶養に入っている場合は、あなたの収入に応じて扶養から外れる基準(年収130万円)はこれまで通り適用されます。

まとめ

2025年に向けた「年収の壁」の見直しについて、ポイントをまとめます。

  • 2025年12月1日から給与収入のみの場合の所得税の非課税限度額が103万円から160万円に拡大。配偶者控除の収入上限も123万円に引き上げ。
  • 19歳以上23歳未満の子どもを支援する「特定親族特別控除」が新設される。
  • 社会保険の適用拡大法案が2025年6月に成立し、今後段階的に適用範囲が拡大される。
  • 賃金要件は遅くとも2028年5月まで、企業規模要件は2027年10月から段階的に撤廃される。
  • これにより「130万円の壁」は最終的に形骸化していく見込みですが、2025年時点ではまだ残ります。多くの企業では週20時間以上の勤務が新たな基準になる予定です。
  • 壁を越えると一時的に手取りは減るが、年収160万円以上を目指せば働き損は解消され、将来の年金も増える。
  • 2025年7月から新設される「短時間労働者労働時間延長支援コース」により、130万円の壁を越える際の支援が強化される。

制度の変更は、一見複雑で不安に感じるかもしれません。しかし、これは女性がより柔軟に、そして意欲的に働ける社会を目指すためのステップでもあります。

この機会に、ご自身のライフプランやキャリアプランを見つめ直し、「何となく扶養内」で働くのではなく、「自分はどう働きたいか」を主体的に考えてみてはいかがでしょうか。この記事が、そのための第一歩となれば幸いです。