2025.07.02
会社の業績アップと人事評価制度を直結させる「SWOT分析」活用法-全社員が自動的に成果を生む仕組みづくり
社長の皆様、こんな経験はありませんか?
「今年こそは!」と気合を入れて作った経営計画。 でも年度末になると、達成できたのは売上目標の7割程度。 幹部に聞くと「現場が動かなくて…」という言い訳ばかり。
実は、経営計画の8割は未達に終わっています。 なぜでしょうか?
答えは簡単です。 社長の頭の中にある戦略が、現場の一人ひとりの行動につながっていないからです。
今回は、この問題を解決する「仕組み」をご紹介します。 SWOT分析というフレームを使って、社長の想いを全社員の行動に変え、業績アップと人事評価制度を完全に連動させる方法です。
社長の悩み「なぜうちの社員は動かないのか」
先日、ある製造業の社長からこんな相談を受けました。
「新しい市場に参入したいんです。でも営業は既存客ばかり回るし、工場は今の製品しか作りたがらない。どうすれば社員が新しいことにチャレンジしてくれるんでしょうか?」
これ、多くの社長が抱える共通の悩みです。
原因は3つあります:
- 社員は「なぜ変わる必要があるか」を理解していない
- 「具体的に何をすればいいか」が分からない
- 「頑張っても評価されない」と思っている
この3つを解決するのが、今回お話しする仕組みです。
まず現状を「見える化」する-SWOT分析のススメ
SWOT分析って何?
難しく考える必要はありません。 会社の現状を4つの箱に整理するだけです。
- S(強み):うちの会社の得意なこと
- W(弱み):うちの会社の苦手なこと
- O(機会):世の中で追い風になること
- T(脅威):世の中で逆風になること
短時間でできる簡単SWOT分析
幹部を集めて、ホワイトボードに4つの箱を書いてください。 そして、思いつくことをどんどん書き出すだけです。
ある町工場の例:
- 強み:「職人の腕がいい」「納期を守る」「社長の人脈」
- 弱み:「営業が下手」「若手がいない」「設備が古い」
- 機会:「EV自動車が増える」「補助金が出る」
- 脅威:「中国製品が安い」「後継者がいない」
たったこれだけで、会社の現状が一目で分かります。
分析から戦略へ-「で、どうする?」を決める
4つの作戦を立てる
現状が分かったら、次は作戦です。 これも簡単な掛け算で考えます。
- 攻めの作戦(強み×機会) 「職人の腕の良さ」×「EV市場」=「EV部品に参入しよう!」
- 守りの作戦(強み×脅威) 「納期を守る」×「中国製品」=「品質と納期で差別化しよう!」
- 改善の作戦(弱み×機会) 「営業が下手」×「補助金」=「補助金で営業研修を受けよう!」
- 撤退の作戦(弱み×脅威) 「設備が古い」×「価格競争」=「汎用品からは撤退しよう」
社長が決めるべき「本命」
4つの作戦から、今年の本命を1つ選んでください。 あれもこれもは失敗のもとです。
例:「今年はEV部品参入に全力投球する!」
これが決まれば、あとは仕組みづくりです。
部門ごとの作戦に落とし込む
「EV部品参入」を各部門の仕事に翻訳する
社長が「EV参入だ!」と言っても、現場は「???」です。 そこで、各部門の部長に聞いてください。
「EV部品に参入するために、あなたの部門は何をしますか?」
営業部長の答え:
- 「EV関連の会社を100社リストアップします」
- 「月に20社は新規訪問します」
- 「技術の勉強会を週1回やります」
工場長の答え:
- 「EV部品の品質基準を3ヶ月で勉強します」
- 「必要な設備投資を半年で提案します」
- 「若手に新技術を教える体制を作ります」
これで各部門の今年の仕事が明確になりました。
ここが肝心!人事評価制度で業績アップを実現する
なぜ評価制度が業績に直結するのか
人は誰でも「評価されること」を頑張ります。 逆に言えば、評価されないことは頑張りません。
だから、先ほど決めた「各部門の仕事」を、そのまま評価項目にするのです。 これこそが、業績アップへの最短ルートです。
営業マンAさんの評価シート(例)
【今までの評価】
- 売上高(80%)
- 勤務態度(20%)
【新しい評価】
- EV関連の新規訪問数(30%)
- EV関連の売上(30%)
- 既存顧客の売上(20%)
- 技術知識テストの点数(20%)
重要なのは作業プロセスの明確化です。 例えば「新規訪問数」という評価項目には、以下の作業プロセスが含まれます:
- リストアップ作業(週10社)
- アポイント取得作業(週5件)
- 訪問準備作業(企業研究・資料準備)
- 訪問実施作業(月20社)
- 訪問後フォロー作業(報告書作成・次回約束)
これらの作業プロセス一つひとつが評価対象となることで、社員は「何をどこまでやれば評価されるか」が明確に分かります。
これで営業マンは「経営計画に基づいた作業プロセスを確実に実行すれば評価される」と理解します。新規訪問という作業、技術勉強という作業、一つひとつのプロセスが評価項目として明確化されているため、日々の業務が経営目標に直結し、結果として業績が変わるのです。
毎月チェックする仕組み
月次会議で数字を追いかける
作戦を立てても、チェックしなければ絵に描いた餅です。 毎月の会議で、こんな数字を確認してください:
- 新規訪問数は目標通りか?
- 技術勉強会は実施されているか?
- 設備投資の検討は進んでいるか?
大事なのは、できていない時に叱ることではありません。 「なぜできないのか」「どうすればできるか」を一緒に考えることです。
人事評価制度の導入で業績が激変した実例
部品メーカーK社
導入前:
- 10年間売上横ばい
- 営業は既存客まわりだけ
- 工場は同じ製品の繰り返し
- 人事評価は年功序列
SWOT分析の結果:
- 強み「精密加工技術」×機会「医療機器市場の成長」
- →「医療機器部品に参入」を決定
人事評価制度の変更:
- 営業:医療機器関連の活動を評価の50%に
- 技術:新製品開発への貢献を評価の40%に
- 製造:品質向上提案を評価の30%に
1年後の業績:
- 医療機器メーカー15社と商談
- 売上の15%が新規事業に
- 営業利益率が5%→8%に改善
3年後の業績:
- 医療機器部品が売上の40%に
- 全社売上60%成長
- 営業利益率10%達成
社長の声: 「評価制度を変えただけで、社員が勝手に動き始めました。私は方向を示すだけで、業績が上がるようになったんです」
社長、明日から始められます
ステップ1(今週中に)
幹部を集めて3時間のSWOT分析
ステップ2(今月中に)
今年の本命戦略を1つ決める
ステップ3(来月中に)
各部門の具体的行動を決める
ステップ4(3ヶ月以内に)
人事評価制度に反映させる
ステップ5(毎月)
数字でチェックして改善
最後に-業績アップは「仕組み」で実現する
社長が現場で頑張っても、会社は大きくなりません。 社長の仕事は、社員が自然に動いて業績が上がる「仕組み」を作ることです。
SWOT分析→戦略決定→部門別行動→人事評価制度→毎月チェック
この流れを作れば:
- 社員全員が同じ方向を向きます
- 具体的に何をすべきかが明確になります
- 頑張った人が報われます
- 結果として、業績が自動的にアップします
「うちの社員は動かない」「売上が伸びない」と嘆く前に、動いて業績が上がる仕組みを作りましょう。
1年後、きっと社長はこう言っているはずです。 「人事評価制度を変えたら、業績が勝手に上がるようになった」
その第一歩を、今日から始めてみませんか?
経営戦略と人事評価制度を一体化させる-これが、持続的な成長を実現する経営の本質なのです。